災害時SNS発信で明暗

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災害時SNS発信で明暗、給水場所拡散、デマ投稿も

電話がつながらずホームページも閲覧しにくい災害時にSNSは有力な伝達手段だが、タイミングによって苦情や混乱を招いたケースも。過去の地震と同様にデマの投稿もみられた。

高槻市はツイッターで、応急給水や避難所開設などの情報を発信した。

 

「19日午前8時半から、小中学校で応急給水をします」。朝に地震が起きた18日夜、最大約2万2千世帯が完全断水した大阪府高槻市がツイッターの公式アカウントに投稿すると、3800回以上リツイート(拡散)された。19日には、58の小中学校に開設された給水所に市民が列を作った。

震度6弱を記録した同市では地震後、ホームページに被災者らのアクセスが集中し、長時間にわたり閲覧しにくい状態が続いた。市は18日午前から避難所の開設、水道の復旧などの情報もツイッターで発信した。

災害に関する情報は被災者らの間でもSNSで拡散。同市の女性(75)は「近所に住む娘がSNSで、市が(雨対策の)ブルーシートを提供する情報を入手し、伝えてくれて助かった」と話す。

同じく震度6弱を観測した同府茨木市が災害情報を初めてツイッターに投稿したのは18日午後5時ごろ。情報提供が遅いとの苦情もあり、担当者は「正確な情報を届けようとして、結果的にほかの自治体より遅くなってしまった」と釈明する。

 

瞬時に拡散するSNSの情報が混乱をもたらした事例もあった。

「全て休校にする指示を出した」。大阪市の吉村洋文市長は18日午前9時20分、自身のツイッターで市立学校の休校を宣言した。市災害対策本部で決定した直後の投稿だったが、市教育委員会が各校に周知したのは同日午前11時すぎだった。

市教委は当初、「休校は各校の判断で」と伝えており、市長の投稿後も授業を続けた学校もあった。同市平野区の市立中学校には投稿を見た保護者から「子供はいつ帰ってくるのか」といった電話が相次ぎ、同校の教員は「指示系統が2つに分かれた形になって困惑した」と振り返る。

市長は19日の会見で「一分一秒を争う事態なので早急に情報をオープンにした」と説明。「学校の対応にずれがあるのは、教委から各校への情報伝達スピードの問題だ」との見解を述べた。

「京セラドーム大阪に亀裂」「京阪電車が脱線」――。東日本大震災や熊本地震で問題になったデマ投稿は今回も相次いだ。ただ、運行会社などに真偽の問い合わせは比較的少なかったという。

ドーム運営会社の大阪シティドーム(大阪市)の担当者は「報道などで注意喚起されたためだろう」とみる。デマと見破る投稿をした人もいた。

大阪府警サイバー犯罪対策課は地震後、扇動やデマの情報が流れていないかネット上のパトロールを展開。目立った混乱はなかったという。同課幹部は「過去の大規模災害のデマを教訓に、惑わされた人は少なかったのではないか」と話した。

 

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■SNS活用、自治体54% 「公式アカウントで確認を」
回線が混み合う電話や、アクセスが集中するホームページに比べ、インターネットにつながれば利用できるSNSは自治体にとって災害時の有効な情報伝達手段となる。政府が2017年11月に公表した調査では、災害対応でSNSを活用するのは全体の54%に当たる941自治体。大都市に多く、人口ベースでは全体の86%に上る。
東洋大の中村功教授(災害情報論)は「利用者の増加で、自治体がSNSで情報発信する重要性は増しているが、活用は手探りの段階だ」と指摘。「災害時はSNS活用に割ける職員は限られる。今回の地震を巡る対応の検証が必要だ」と強調する。
デマ投稿も踏まえ、「住民は発信者によって情報の信用度が異なることを自覚すべきだ。正確な情報を得るには自治体の公式アカウント、早く現場の状況を知るには個人の投稿などと使い分けた方がいい」と助言する。

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日本経済新聞 2018/6/25 一部抜粋

投稿者: 永田